2013年01月18日
兵ちゃん
ミジンコの繁殖「休眠卵付きミジンコ君」について
ミジンコは熱帯魚の最良のエサである事をご存じだと思います。熱帯魚を飼育しているとミジンコを食べさせてやりたいと思った事があると思います。そこで、今回は、タマミジンコの休眠卵を入手してミジンコのエサである「ミジンコ君」を使ったミジンコの繁殖について紹介したいと思います。
1.ミジンコとは
ミジンコは水中にてプランクトンとして生活する小型の甲殻類になります。肉眼では見えないと思っている人が多いのですがミジンコの体長は、1.5〜3mmのものが多く肉眼で見る事ができます。ミジンコはプランクトンの典型として教科書や図鑑では必ず紹介され知名度は高いのですが食物連鎖のサイクルに植物性プランクトンを食べて魚等に食べられてしまうという役割を学校で習ったと思いますが・・・ミジンコの食生活は、なにも、ミドリムシという植物性プランクトンばかりを食べているのではなくてゾウリムシやワムシ等の動物性プランクトンも食べています。生息環境としては世界的に分布し日本でも全土に分布、浅い池沼に生息しています。また、ミジンコは、熱帯魚をはじめとする観賞魚の最良の餌でもあります。
2.ミジンコの休眠卵(耐久卵)
ミジンコはメスで増えていき自分とおなじクローンしか産まない単為生殖期と、オスがあらわれて交配して子孫を残す有性生殖期があります。単為生殖の場合は卵から孵化したものは成体とほぼ同じ形で生まれるため非常に素早く増殖し大発生をすることがあります。環境条件が悪化したり個体数の密度が上がりすぎたりするとオスが生まれます。オスはメスと交配をすると卵は休眠卵となりこの卵は鞘に収まっていて乾燥にも耐える事が出来ます。そして条件が良くなってから孵化をします。さらに休眠卵の作られる条件として年一回であったり、あるいは春秋二回である例が多い他に一年間で何度もオスが出現して耐久卵を産むミジンコも存在して様々な季節に休眠卵を見ることができるそうです。
スクリュー管の中の休眠卵
3.ミジンコの入手
ミジンコの入手はいくつか方法がありますが方法については次の表のとおりです。今回は、保存時要冷蔵(5℃前後)の生のタマミジンコの休眠卵を入手して繁殖を開始します。入手先は、「サン・ニュートリジョン株式会社」のホームページから購入します。今回は、タマミジンコの休眠卵とミジンコのエサ「ミジンコ君」のセットを購入しました。価格は、送料別2,600円でした。その他にさらに安い教材用セットは送料別980円というものもあります。
生の休眠卵を入手 |
確実に種類を特定したものが入手でき確実な方法だがお金がかかる。 |
田んぼ等の土を入手 |
土の中に含まれている休眠卵を孵す方法、ミジンコの種類を特定するのが難しい。最近では農薬により汚染されてミジンコが入手できるか不確実 |
池や川で採取 |
季節に左右され、ミジンコの種類を特定するのが難しい。 |
鶏糞を使う |
野外でバケツ等に水を張り、鶏糞を入れて乾燥したミジンコの休眠卵が風で飛んできてミジンコがわくのを待つ方法、時間がかかり不確実 |
URL http://sun-nutrition.co.jp/cgi-bin/saleItem_indication.cgi?pid=8
4.飼育する水槽の準備
ミジンコを初めて飼う人は孵化の様子がわかるように凹凸が少ないペットボトルで容量は2Lのペットボトルに半分ほど水を入れて始めるのが良いようです。水面がある程度無いと水中に溶ける酸素が少なくなるのでよくないそうです。入れる水は、もちろんカルキを抜いた水を準備してください。水で推奨しているのは「サントリーの天然水」の名前が挙げられています。あと、準備する水槽の水は、クロレラ、セネデスムスなどの植物プランクトンが発生している緑色になった水の緑水は必要ありません。その代わりにエサは人工飼料の「ミジンコ君」を使います。それと、水温をコントロールするために熱帯魚飼育用のサーモスタットとヒーターがあったら良いようです。
品名 |
説明 |
ペットボトル |
凹凸が少ない物が観察しやすい、容量は2L |
水槽 |
水槽の中にペットボトルをいれて熱帯魚飼育用のサーモスタットとヒーターで温度を一定に設定するのに必要 |
水 |
カルキを抜いた水、容量は約1L分使う |
熱帯魚飼育用のサーモスタットとヒーター |
温度を維持するのに必要 |
熱帯魚飼育用エアーポンプ |
規模を拡大して水槽でミジンコを飼う時に溶存酸素をあげる時に使う。エアーストーンを付けて水面近くに設置する。対流を少なくする。 |
掃除屋さん |
レッドラムズボーン等の貝やエビ等の掃除屋さんを入れておくと食い残した「ミジンコ君」を食べて綺麗にしてくれるそうです。水質のチェックにも使えます。 |
5.休眠卵から孵化させる
休眠卵からミジンコを孵化させるには年間をとおして室温であれば孵化できるそうですが温度により孵化にかかる時間と孵化できる確率が変わってくるようです。水温による違いでは、最良の水温は、20〜25℃にしたほうが良いようです。ペットボトルを使うと肉眼で孵化したタマミジンコが泳いでいるのを確認できます。なお、休眠卵はスクリュー管の中に60〜80個の卵鞘が入っています。1個の卵鞘に2個の卵が入っているので一番最初は、120〜160個のタマミジンコが孵化します。
水温 |
日数 |
10℃ |
8日目から孵化(水温が低いと孵化しても死亡する割合が高い。) |
15℃ |
4日目から孵化(水温が低いと孵化しても死亡する割合が高い。) |
20〜25℃ |
2日目から孵化し3日目にはほぼ100%孵化 |
ペットボトル内を泳ぐ孵化したタマミジンコ
6.エサの与え方
まず最初に注意しなければならない事は、ミジンコの生息数にもよりますが、エサである「ミジンコ君」のやりすぎは水の腐敗を招きます。もし、与えすぎて腐敗臭がしたら給餌を止めて、容器の水の撹拌だけ行ってください。1日に1回〜2回。これで表面酸素が水に溶け込み有機物を分解してくれます。なお、水が多少腐敗してもミジンコが死ぬことはありません。増えた菌はミジンコの餌となります。腐敗臭がなくなりましたら前と同じ操作をして下さい。エサの与え方は10Lと100Lの水槽を例にしています。自分の飼育環境へ換算してエサを与えて下さい。
|
手順 |
説明 |
1 |
注意 |
「ミジンコ君」の与える量は、与え過ぎより少な目の方が安全です。 |
2 |
与える量の算出 |
10Lの水に対して孵化直後は0.1g前後、小さじ1/6杯(耳かき2〜3杯)になり、100L時は0.5〜1.5g(ティースプーン摺り切り1/3〜1杯)になります。その後2世が誕生してからは少しずつ増やしていき・・・”たくさん増えたな”と思う時で0.3〜0.4gほどです。その後はミジンコの数により増やしていきますが最大でも1gぐらいまでです。 |
3 |
小さな容器で撹拌する。 |
50〜100mlの水を入れた容器に入れ、撹拌し分散させます。 |
4 |
飼育している容器に入れる。 |
親ミジンコの入った容器(10L)に与えます。与える時にスプーン等で水をかき回してください。この時に水中への酸素の吸入にもなります。 ペットボトルの場合は手荒ですが蓋をしてひっくり返せば良いそうです。また、水槽に直接、エサである「ミジンコ君」を入れてもOKです。ただし、小型容器でいったん分散させたほうが、水の汚れは少ないそうです。 |
5 |
ミジンコが食べる。 |
ミジンコは「ミジンコ君」をろ過するようにして捕食します。 |
6 |
水が綺麗になる。 |
「ミジンコ君」で若干濁った水がミジンコの濾過・捕食作用で綺麗になります。水の濁りはコップ等ですくって見て下さい。 |
7 |
においで給餌を決める。 |
水の臭いがキツクなるようでしたら給餌を止めて臭いがやわらかくなるまで待ちます。 |
8 |
再度、エサを与える。 |
半日位経って水が綺麗になったのを確認できたら「ミジンコ君」を再度与える。 |
9 |
ミジンコの数により調整する。 |
「ミジンコ君」の与える量は、水の濾過具合を見て徐々に増やしてください。ミジンコの数が増えてくると、水が綺麗になるのが早くなります。 |
10 |
繰り返す。 |
以上を繰り返す。 |
7.タマミジンコの繁殖
世代別の違いは、休眠卵から孵化して次の世代の2世が生まれ、さらに次の世代の3世が生まれるまでの日数は次のようになります。最初の段階で休眠卵はスクリュー管の中に60〜80個の卵鞘が入っています。1個の卵鞘に2個の卵が入っているので一番最初は、120〜160個のタマミジンコが孵化します。その後、順調にいけば10日後には、最大で個体数は計算上5,760個まで増えます。ここまできたら飼育している水槽やペットボトルを2〜3本へ分けて飼育した方が全滅を防げます。この急激に増え始める頃に嬉しくなってエサ(ミジンコ君)を与え過ぎて死なせてしまうケースがあるそうなので注意をする必要があります。あと、休眠卵から孵化して1回目の産仔では数匹で、その後、順調に成長したタマミジンコは最大で数十匹産むそうです。それと、ミジンコの平均寿命は25℃で8日間、その間に2-3回産卵します。増えていく裏では寿命を迎えるミジンコ達もいます。
|
孵化 |
平均日数 |
個体数(計算上の数値) |
1 |
1世の孵化までの平均日数 |
3日 |
約120〜約160 |
2 |
2世が誕生するまでの日数 |
4日 |
約480〜約960 |
3 |
2回目の2世と3世が誕生するまでの日数 |
3日 |
最大 約5,760 |
8.飼育水槽を分ける
ミジンコを繁殖させていると突然、個体数が減る事があります。原因は、個体数が増えすぎたのか水質の悪化が考えられます。そのため、上手な給餌とミジンコを間引するか飼育水槽(容器)を小分けして個体数を減らすとミジンコの突然の全滅は起きないそうです。それと、ミジンコの性質で環境が悪くなるとオスが現れ、オスとメスで休眠卵を作り数ヶ月は孵化しないそうです。これもミジンコが急激に減る原因と思われます。また、ミジンコの飼育では、水換えの必要はありません。長いこと繁殖してそこに沈殿物が蓄積してきたら、最初からやり直すと良いようです。この時に沈殿物中にはミジンコの休眠卵も含まれています。一旦乾かして再度水に入れると休眠卵が孵化する場合があるそうです。なお、休眠卵は、冷蔵庫に入れて保存すると1年くらいは持つそうです。
9.実際の飼育
今回は、2Lのペットボトルで半分カルキを抜いた水を入れて水温は25℃を維持して開始しました。孵化の状況は資料のとおりで2〜3日目にかけて孵化して3日目からエサの「ミジンコ君」を与えました。それと、自分が考えているタマミジンコの用途は、熱帯魚のエサにするので3日目で孵化の観察は終了して飼育水槽を60cm水槽へ移しました。60cm水槽については次の表のとおりです。予定では10日後(2012.12.29)には個体数が増えて熱帯魚にエサとして与えられるようになると思います。
|
2012.12.19 0日目 |
2012.12.20 1日目 |
2012.12.21 2日目 |
2012.12.22 3日目 |
状態 |
開始 |
× |
○ |
○ |
60cm水槽
|
役割 |
説明 |
1 |
照明 |
15W×4 |
2 |
照明コントロール |
24時間タイマー |
3 |
水温コントロール |
熱帯魚用のサーモスタットとヒーターを使って25℃に設定 |
4 |
エアー |
溶存酸素を維持するために使うが対流を少なくするために水面近くにエアーストーンを設置して使う。 |
5 |
掃除屋さん |
レッドラムズボーンという貝とチェリーレッドシュリンプというエビを入れる。 |
6 |
水質管理 |
10.ミジンコの処分について
環境保護のため、タマミジンコや休眠卵は、下水等に流さないで下さい。必ず、熱湯で殺すか塩素で殺すかして処分して下さい。生息地域でも自然環境に影響をあたえて壊してしまう事になります。注意して下さい。
これで「ミジンコ君」を使ったミジンコの繁殖のやり方をわかってもらえたでしょうか?ミジンコを繁殖させる時の参考になれば幸いです。
参考URL等
サン・ニュートリジョン http://sun-nutrition.co.jp/
休眠卵付きミジンコ君 http://sun-nutrition.co.jp/cgi-bin/saleItem_indication.cgi?pid=8
ブログ http://cplus.if-n.biz/5001568/
休眠卵付きミジンコ君の取説
合同出版社 普及版 やさしい 日本の淡水プランクトン 滋賀の理科教材研究委員会【編】
岩波ジュニア新書 ミジンコはすごい! 花里孝幸著
色々